映画『ベイビー・ブローカー』のあらすじ
古びたクリーニング店を営むサンヒョンと、“赤ちゃんポスト”がある施設で働くドンス。ある晩、彼らは若い女・ソヨンが“赤ちゃんポスト”に預けた赤ん坊を連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし翌日、思い直したソヨンが戻ってきて…。 参照:U-NEXT
制作(公開年) | 2022年 |
---|---|
上映時間 | 130分 |
監督 | 是枝裕和 |
主演・キャスト | ハ・サンヒョン:ソン・ガンホ ユン・ドンス:カン・ドンウォン アン・スジン:ぺ・ドゥナ ムン・ソヨン:イ・ジウン イ刑事:イ・ジュヨン |
主演キャスト「ソン・ガンホ」映画一覧
- 『南極日誌』(2005)
- 『JSA』(2000))
- 『タクシー運転手 約束は海をこえて』(2017)
- 『パラサイト 半地下の家族』(2019)
- 『非常宣言』(2022)
『ベイビー・ブローカー』の主演、ソン・ガンホは、1967年1月17日生まれの俳優です。芸術系大学を中退して兵役に行き、1991年から舞台俳優として役者の道を進み始めます。1996年に『豚が井戸に落ちた日』で映画デビューを果たしたのち、コミカルからシリアスまで幅広い役柄を演じ分けて人気を集めます。『JSA』(2000)では、初めて主演男優賞を受賞して、韓国国内にとどまることなく、世界に名を馳せるようになりました。ハリウッド映画の『スノーピアサー』や日本映画『渇き』などにも出演していて、今後も世界をまたにかけて活躍することが期待されています。
映画『ベイビー・ブローカー』に併せて観たい映画一覧
- 『万引き家族』
- 『存在のない子供たち』
- 『朝が来る』
- 『mid90s ミッドナインティーズ』
- 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
『ベイビー・ブローカー』のような(ジャンル)映画を観たい時におすすめの映画5本を厳選しています。
『ベイビー・ブローカー』のような社会の闇に隠れた問題をテーマにした映画を5つ紹介します。『万引き家族』は、『ベイビー・ブローカー』で監督を務めた是枝監督による邦画作品で、年金不正受給で逮捕された家族をテーマにした社会派映画です。社会派映画は、普通に生活していると見えてこない社会問題を知る機会になります。「なぜ、事件が起きたのか」「罪を犯した人の動機」をストーリー仕立てにして見つめることができます。キャラクターの心情が見えると、社会一般的な「悪」をただの悪として捉えることなく、社会の格差や差別に問題があることに気付かされます。
『ベイビー・ブローカー』を観た感想
・日本の監督が韓国映画に挑戦 『ベイビー・ブローカー』を手がけた是枝裕和監督といえば、『万引き家族』『誰も知らない』など日本が抱える貧困やネグレクトなどの問題に鋭く切り込んだ映画を数多く輩出していました。『万引き家族』を制作したのちは、フランスや韓国など海外での映画制作に力を入れている印象です。そんな是枝監督は、ただ「社会問題を描く映画監督」という枠にとどまりません。
フランスと韓国の映画制作現場に入ったからこそ、日本の映画制作の現場が遅れているという実態をメディアで発信しました。フランスでは、映画制作でも1日8時間労働、週休2日が厳守されていて、韓国では2日働き1日休むと決まっていて女性スタッフが全体の43%を占めているとのこと。日本では、女優や女性スタッフに対するセクハラ問題、劣悪な環境かつ低賃金で搾取されるスタッフの問題がたびたび話題になります。
是枝裕和監督は、ただ映画の中で問題提起することにとどまることなく、現実社会をよくしようと動く監督です。本作では、ただ単に赤ん坊縁組やブローカー行為を批判しているのではなく、さらに深掘りをして、韓国社会が抱える問題を浮き彫りにしました。
・実力派の役者が揃っていて見応えがある
『ベイビー・ブローカー』に登場する役者たちは、実力は揃いばかりです。主演、ソン・ガンホといえば、世界的にも知名度の高い韓国出身の俳優です。邦画『渇き』に出演するほか、韓国で社会派映画を多く手がけているアカデミー賞受賞経験を持つポン・ジュノ監督の作品の常連俳優でもあります。また、是枝監督が2009年に制作した『空気人形』で主演を務めたぺ・ドゥナ、女優とアーティスト、IUとして二足の草鞋を履くイ・ジウン、『梨泰院クラス』で知られるイ・ジュヨンなど実力を金揃えた役者が集結しています。日本人の監督がメガフォンを取りますが、韓国映画特有のコミカルな会話は健在。さらにブローカー問題をシリアスに描き、クライマックスで見せるショッキングな衝撃に圧倒されました。
・言葉にならないクライマックス
社会派映画の多くは、何かしらのメッセージがクライマックスに込められてることが多いです。必ずしもハッピーエンドとは限らず、社会の不条理さが全開なバッドエンドも珍しくありません。しかし、『ベイビー・ブローカー』に関しては、ただ「社会は悪だ」「登場人物たちが報われない」「希望があってよかった」など簡単に言い表せる結末ではありません。なんともいえないモヤモヤとした気持ちが湧き出てきました。「モヤモヤ」といっても、パッとしないというわけではなく、同時にいくつもの感情が溢れて、余韻から抜け出せなくなるというものに近いです。
「子どもを捨てた親」「親に捨てられたこども」「捨てられた子どもを大人に売る大人」「捨てた子どもを探す親」など、本作に登場するキャラクターは、誰もが不完全です。赤ちゃんポストは、子どもを育てられない大人が、子どもを欲しい大人に渡すため、ウィンウィンのように見えますが、ブローカーが関わることで、子どもに値段がつけられます。ちょっとした見た目の差で、「高い」「安い」と取引される現状。韓国が舞台になっているのは、韓国での赤ちゃんポストの問題が大きく取り上げられているからですが、この問題は日本でも例外ではありません。経済が低迷する中で、少子化が進む日本、『ベイビー・ブローカー』を見ることで、改めて生まれてくる命とは何か、望まれない命として誕生することとは何を意味するのか考えさせられるでしょう。
コメント